1987年から1993年までの当施設における肺癌摘出標本263例を用いて、肺癌における癌抑制遺伝子p53変異の臨床的意義について検討し次の結果を得た。 1.変異型p53蛋白は腫瘍の周辺部の細胞増殖が盛んな部位に発現が認められることが多く中心部においては変異型p53蛋白の発現はまれにしか認められなかった、変異型p53蛋白発現腫瘍は非発現腫瘍と比較して腫瘍細胞増殖能が有意に高かった(P<0.01)。 2.変異型p53発現は腺癌154例中56例(36%)、扁平上皮癌89例中52例(58%)に認められ扁平上皮癌に有意に効率であった(P<0.001)。また大細胞癌13例中7例(54%)、腺扁平上皮癌5例中3例(54%)、カルチノイド、粘表皮癌には発現は認められなかった。 3.変異型p53蛋白発現は臨床病期別ではI期40%、II期48%、IIIA期46%、IIIB期50%、IV期55%に認められたがその間に有意差は認められなかった。腫瘍径、リンパ節転移との関連も認められなかった。 4.I期II期においてp53変異群の5年生存率は49.5%で非変異群では77.9%であり変異群の方が予後不良の傾向を認めた。III期IV期においてp53変異群の5年生存率は6.4%で非変異群では34.8%であり変異群の方が有意に予後不良であった(P<0.01)。 以上の研究成果を第47回胸部外科学会総会、第35回肺癌学会総会にて発表した。
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