心筋の成熟度による虚血に対する反応性の違いに関する研究は、現在までに数多く認められるが、未だ一定の見解が得られていない。我々は虚血心の終末段階である心筋拘縮の起こり方に焦点を絞り、そのエネルギー動態にどのような相違があるかについて検討をおこなった。 実験動物にはNew Zealand Rabbitを用い、未熟心筋群(IM群)として生後4〜5日までのNewborn Rabbitを、成熟心筋群(M群)として2〜3kgのAdult Rabbitを用いた。モデルはLangendolff装置による灌流をおこない、灌流液にはKrebs-Henseleit液を用いた。 コントロールとして、37℃で各群30分間灌流後、血行動態(拡張気圧8〜10mmHgの際の脈圧測定をおこなった。虚血導入実験として、上記後、灌流クランプにより常温虚血として拡張気圧3〜4mmHgに設定して放置、拘縮の開始時点とプラトーとを圧曲線で確認後、拘縮直前、直後、15、30分後、プラトー後において心筋を採取した。エネルギー源操作実験として30分の灌流後、IAA加高カリウム液にて心停止後低量灌流し、拘縮の開始時間、組織内動態を検討した。[結果・考察]未熟心筋においては、コントロール群と比較して拘縮の開始時間は短時間において発生し、酸素に依存する度合いが低いことが考えられた。また組織内ATPの減少が認められた。しかし電顕所見からは、細胞構築に関し顕著な所見は得られなかった。このことから、代謝が行われなかった、また不完全な代謝によりATPの減少、消費が認められたことの結論は得られず、嫌気性代謝によるものであると考えられた。このことからも今回の実験系にて、未熟心筋においては、TCA回路によるエネルギー代謝を必要としない嫌気性代謝であることが示唆された。
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