研究概要 |
1.両側翼突口蓋神経節切除による除神経モデルに関して (1).雄のSprague-Dawleyラットを用いて、ネンブタール麻酔下に片側の翼突口蓋神経節切除を試みた。神経節切除後2週間で動物を断頭し、Willis動脈輪および基幹動脈を取り出してVIPおよびNOSの免疫染色をおこなったところ、反対側に比べて切除側においてこれらの副交感神経線維の有意な減少を認めた。 (2).上記手技は難易度が高く、術中に大量出血をきたし本実験に使えないものがあった。またうまく切除できたと思われても、免疫染色をしてみると神経線維の減少がわずかなものが認められた。神経線維の一部は反対側の神経節由来も考えられるので両側神経節切除をおこなえばさらに減少がみられると考えられる。 (3).除神経モデルのこのような特性を考えると、本実験終了後にそれぞれの動物で脳血管を取り出し免疫染色により除神経の程度を確認し、低温度の脳保護作用と除神経の程度の相関をとることが必要と考えられた。 2.低温度による局所脳虚血後の脳梗塞の縮小効果 (1).雄のSprague-Dawleyラットを用いて、ハロセン麻酔下に2時間の金属クリップによる中大脳動脈閉塞をおこない、終了後ラットを生存させると100%の24時間生存率が得られた。 (2).2時間の脳虚血中、体温を37.5℃,33℃,30℃に良好にコントロールすることが可能であった。 (3).24時間生存後に断頭し脳を取り出して厚さ2mmの8枚のスライスとし、TTC染色をおこなって脳梗塞の部分を描出した。イメージスキャナーで染色した脳切片の画像を直接コンピューターにとりこみ、脳梗塞面積をそれぞれのスライスで測定し梗塞体積を計算すると、低体温群で体積の小さい傾向が認められた。このように、正常ラットにおいて軽度の低温度による脳保護作用が再確認された。 3.現段階では、以上の結果が得られたので報告する。今後、このままの除神経モデルで実験を遂行していくか、もっと有効な除神経方法があるのか検討の上、除神経動物における低体温の脳保護効果を検討していきたい。
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