対象とした下垂体腺腫は、17例の成長ホルモン産生腺腫、10例のプロラクチン産生腺腫、14例の臨床的非機能性腺腫である。in situ hybridization(ISH)法を用いて下垂体前葉ホルモンmRNAの発現について検討を行い、成長ホルモン産生腺腫と臨床的非機能性腺腫の一部で免疫組織化学で陰性であるにもかかわらず、当核ホルモンmRNAの発現が確認された。これらホルモン合成にまで至らないmRNAの細胞内局在について電子顕微鏡下でのISH(EM-ISH)により検討した。方法は、パラフォルムアルデヒドで固定後の凍結切片を用い、ビオチン化オリゴヌクレオチドプローブを用いて、ISHを行った。mRNAのsignal detectionは、horseradish peroxidaseで行い、陽性所見がえられたのち、osmification、倒立法によるEpon包埋をおこない、電子顕微鏡で観察した(Preembedding法)。その結果、これらのmRNAは、ホルモン合成にまで至るmRNAと同様に、粗面小胞体に局在することが確認された。また、これらのホルモン合成にまで至らないmRNAが、実際にホルモンを翻訳しうるmRNAなのか、それともmRNAの発現があってもその後の翻訳の過程に問題があるのか、という点も大変興味深い問題である。この点について、in vitro translation法により、mRNAから蛋白合成をおこなうことにより検討したいと考えており、今後の課題となっている。
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