研究概要 |
直径100μのステンレスワイヤーを編み上げた金属ステントにポリ酢酸ビニル(PVAc)膜を張り、径5mm,膜厚100μの固分子膜付きステントを作製した.血管内留置中の造影性が低く,PVAc中にタンタルム粉末を添加する事によって,この点は解決された.本ステントを,従来より臨床的に応用されている血管拡張用バルンカテーテル(PTAカテーテル)に折り畳みながら装着し,これを用いた拡張実験,留置実験,造影実験,動静脈瘻塞栓実験を行った. 1)拡張実験 PTAカテーテル(Cookバルン長4cm,バルン径6mm)にステントを装着し,圧力ゲージを用いて加圧時の気圧をモニターしながら,圧力とステントの拡張径の相関関係を検討した.本モデルステントは,加圧1.5気圧以上にて本来の拡張径にほぼ一致した径となることが判明した. 2)留置実験 家免屍体から摘出した胸部大動脈標本(内径4mm)に,上記モデルステント(径5mm)を留置した.留置は円滑でバルン引き抜き時のステントの移動は見られなかった. 造影実験 成犬(体重20kg前後)に前進麻酔下に,経大腿動脈的にステント装着バルンカテーテルを総頸動脈に誘導し,ステントを留置,血管撮影にてステントの位置,形状,造影性を観察した.その結果,透視下にステントの可視性は良好で,留置後のステントの移動を認めず,留置直後の血管撮影上,内径は十分に維持されていた. 4)動静脈瘻塞栓実験 成犬(体重20Kg前後)の内頸静脈総頸動脈間に実験的に動静脈瘻を作製し,3)と同様にステントを瘻孔部に留置した.ステントの留置により瘻孔部は閉塞されたが親動脈も直後より血栓化してしまうことが判明した.そこで,高分子膜に抗血栓剤を含有させたところ,瘻孔の閉塞は十分でかつ親動脈の,留置直後の血栓化は見られなかった. 以上より,今後,十分な閉塞性を有し,かつ長期にわたり内腔の開通性を得られることの確認,留置された部位の組織学手区検討,実験的脳動静脈瘤への応用などが今後の検討課題である.
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