脳動脈瘤発生のメカニズムとして、血流側の因子(血行動態による力学的負荷)と血管側の因子(血管壁の脆弱性)の関与が想定されている。我々は血管壁側の因子に注目して研究している。本年度の研究では、脳動脈瘤壁から組織コラゲナーゼを抽出し、その蛋白分解酵素活性を測定することにより、動脈瘤の発生に組織コラゲナーゼ活性の亢進が関与しているかどうかを検討した。 手術時に採取した脳動脈瘤と浅側頭動脈からコラゲナーゼを抽出し、その蛋白分解酵素活性測定した。また、このコレゲナーゼを各型の精製コラーゲンに作用させ、分解産物をSDSポリアクリルアミド電気泳動法とウエスタンブロッティング法により解析し、コラーゲンの断片化の状態を観察した。今年度の設備費で購入したブロッティング装置は、これらの過程において使用した。 今までのところ脳動脈瘤に関連して蛋白分解酵素活性が上昇している傾向が観察されている。したがって、脳動脈瘤の発生、破裂の過程において局所の蛋白分解酵素が動脈壁の破壊に関与していることが推察できる。しかしながら、手術症例から材料を得るため、採取し分析できた標本数が少なく、結論を得るまでには至っていない。今後研究を継続する予定である。
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