研究概要 |
われわれは、ヒトパーキンソン病に対して自家星状神経節の脳内移植を行ない良好な成績を得ている。本研究では移植手術が認知機能に及ぼす影響について検討を行った。術前のパーキンソン病患者の認知機能は健康成人に比べ、明らかな低下を認めた。その中でも Mini-mental stateや阪大式メモリースケールの総得点は明らかな差を認めた。特に story recall,associate learning,visual reproduction,delayed recallは健康成人に比べ明らかな低下を認めた。語想起課題は健康成人と比べ、差を認めなかった。かなひろいテストでは平均17.3±9.4で、23例中6例は10個未満と明らかな低値を示した。移植を行ったパーキンソン病23例中15例で阪大式メモリースケールの総得点で改善を認めた。また、story recallの改善は17例で認められた。重症度別にみるとHoehn & Yahr stage Vの症例で改善例を多く認めた。手術側別に検討すると、右側手術17例中11例でかなひろいテストの改善を認めた。また、12例で阪大式メモリースケールとの改善を認め、この中でもstory recallの改善を12例で認めた。一方、左側手術では6例中5例でassociate learningの悪化を認め、他の1例は不変であった(P<0.05)。以上より、星状神経節移植術後には認知機能の改善を認め、移植手術によって脳内のドーパミンが増加した可能性が考えられた。また、左側手術ではassociate learningの悪化を認めたが、右側手術では言語機能や視空間能力などを悪化させなかったことから、 transplantationを行なう場合には右側に行なうべきと思われた。
|