ドレブリンは神経系の発生過程で特徴的に発現する蛋白質であり、ヒト及びラットでは2種類のアイソフォームE、Aよりなるが、そのうち成熟後にも存在するドレブリンAは神経特異蛋白であり、分化した神経細胞のみに特異的に発現されている。今回ドレブリンA cDNAをもつ発現ベクターを作製してL細胞に導入し、形質転換線維芽細胞MiwD-6(β-actin promoter)とMTI-5(Metallothioneinpromoter)を確立した。 MiwD-6細胞では網目状のアクチン線維が観察され、ドレブリンと局在が一致していた。MiwD-6細胞とL細胞にtubulinの脱重合剤であるcolcemidとアクチンの脱重合剤であるcytochalasinDを加えたところ、microtubulesとstress fiberは両者共破壊されていたが、MiwD-6細胞の形態はよく維持され、L細胞のほとんどが球形化したのと対照的であった。この形態変化とcytochalasin D濃度との間には正の相関を認め、アクチンの重合状態が変化していると考えられた。また、抗vinculin抗体を用いてcytochalasin D添加時の接着斑を解析するとMiwD-6細胞はL細胞に比べ、接着斑がよく維持されていた。 一方、MTI-5はCd添加量の増加に伴ってドレブリン発現量が増加するが、それに伴い、突起伸展細胞の割合が増加すると共にストレスファイバーから網目状のアクチン線維への変化が観察された。このとき、ドレブリン発現細胞では免疫染色でビンキュリンの染色性が増加して接着斑がより明かに同定され、ウェスタンブロッテイングでも発現量の増加が確認された。また、ドレブリン発現細胞ではアクチンの脱重合剤cytochalasin Dに対して接着斑が安定化している所見が得られた。 以上のことから、ドレブリンはアクチンの重合状態を変化させることによって細胞形態の変化及び細胞-細胞外基質接着に関与していると考えられた。
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