我々はヘモグロビンの酸化還元作用を利用して、抗癌剤として現在用いられるアクチノマイシンDと同じ構造を有する誘導体を合成し、その抗腫瘍効果について検討した。 <方法>;1、アクチノマイシンD誘導体の合成;牛ヘモグロビン溶液を作成し、試薬として2-アミノ-5-メチルフェノールを加えた。この混合溶液を37℃で7日間インキュベーション後、上清混合物をカラム(セファデックスLH-20)に通して目的物を分離採取した。なお採取したアクチノマイシン誘導体をYT-5と命名した。2、抗腫瘍効果の研究;次のin vivoの実験としてはじめにラットグリオーマ細胞(C6、9L)、ヒトグリオーマ細胞(U251、Cl-1)をそれぞれ107個培養調整した。合成した抗癌剤(YT-5)を培養液に0.01・0.1・1・10mg/ml濃度でそれぞれの細胞群に投与した。効果を比較する抗癌剤として、アクチノマイシンD、マイトマイシンCを用い、同じようにそれぞれのグリオーマ細胞に投与し、7日間にわたって細胞数をカウントした。また細胞障害試験としてWST-lassey法を用い、上記と同様の濃度にたいして吸光度を測定し、濃度吸光度曲線から本抗癌剤のグリオーマ細胞にたいする至適濃度を求めた。 <結果>それぞれのグリオーマにおいて1mg/ml・10mg/ml濃度で細胞増殖抑制効果を認め、至適濃度としては0.53mg/mlの結果を得た。以上の結果を参考にin vivoの実験をすすめてゆきたい。
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