ラット新生仔の大脳皮質、海馬から得た培養アストロサイトをacidic fibroblast growth factor、interleukin-1β、tumor necrosis factor-αにて刺激して得たアストロサイト培養上清(S-ACM)を用い、刺激していないアストロサイト培養上清(C-ACM)と比較することにより以下の実験を行った。まず、胎生16日ラットの中隔野、脳幹、脊髄ニューロンの選択培養系にアストロサイト培養上清(ACM)を作用させcholine acetyltransferase(CAT)活性を測定したところ中隔野、脳幹、脊髄ニューロンともCAT活性は上昇し、C-ACMよりS-ACMの方が強い作用を有していた。中隔野ニューロンに対してはnerve growth factor(NGF)を介する作用であり、脳幹、脊髄に対してはNGF以外の因子を介する作用と考えられた。 同様にACMの大脳皮質ニューロン、中脳ドパミン作動性ニューロンに対する生存維持効果を検討した。大脳皮質ニューロンに対するACMの効果は明らかではなく、中脳ドパミン作動性ニューロンに大してはACMは生存維持効果を有したが、これはサイトカインの刺激による効果増強は認められなかった。 次に、脳幹ニューロンのCAT活性を指標にして、S-ACM中に含まれる神経栄養因子の分離精製を試みた。現在、S-ACM中のヘパリン親和性蛋白が活性を有することが判明しており、さらにこの精製分離を進めているところである。脳幹コリン作動性ニューロンの多くは運動性脳神経であり、この因子は運動性脳神経機能障害の修復に関与すると考えられる。
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