今回作成した離脱式コイルを用いて、イヌの総頸動脈に形成した実験動脈瘤に対する電気塞栓術を行った。実験の過程においては、その結果より適宜、離脱式コイルの改良を行った。 1.作成直後に電気塞栓を行った例では、7個の動脈瘤中動脈瘤が完全に塞栓され治癒したと考えられたものは4例、不完全閉塞は1例であった。2例で親血管の閉塞が生じ、塞栓術は不成功であった。これは、直流電流の通電時間や電流・電圧などまだ考慮せねばならない要因があると考えられた。離脱は、1mAを約5分通電することで、生じた。長期経過観察を行った3頭のイヌのうち、直後に動脈瘤の完全閉塞の得られた2例は、42日後、63日後においても完全閉塞を認めた。このことより、この離脱式コイルによって動脈瘤を治癒させることは可能であると考えられた。1例は塞栓術直後において不完全閉塞であり、これは、電気塞栓21日後における血管撮影にても、血栓化の進行はみられなかった。 2.組織学的検討では動脈瘤内に器質化した血栓が形成され、管腔側は内皮細胞で被われていた。 3.今回の実験によって、動脈瘤に対する電気塞栓およびコイルの離脱をある程度制御することが可能な新しい離脱式コイルを開発することができた。この離脱式コイルでは0.5mAの通電で血栓を形成させたのちに、電流を1mAに上げることによって、約5分間で離脱が生じる。今後、動脈瘤を塞栓させるのにより適した電流や電圧の電気的条件や親動脈閉塞が生じないための条件、さらに、直流電流の通電による毒性の検討が必要となろう。また、脳血管により適合したシャフトの開発が不可欠になってくる。
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