proteoglycan合成促進作用を有するインシュリン様成長因子(以下IGF-1)を介した椎間板基質代謝調節機構を検討した。IGF-1のmRNAの発現の有無(in site hybridization法)より椎間板細胞がIGF-1の合成分泌能があるかどうかを、免疫組織化学染色により細胞膜表面のIGF-1受容体の存在を検証した。さらに椎間板の細胞培養系(in vitro)ならびに生体椎間板細胞(in vivo)の両者において比較検討し以下の結果を得た。 1.椎間板髄核培養細胞(in vitro)においては髄核細胞よりIGF-1のmRNAが発現されていること、また細胞表面にIGF-1受容体が存在することが確認された。椎間板髄核の培養細胞はIGF-1添加にり基質合成は促進されることより、IGF-1のauto/paracrine機構を介した基質合成調節機構が存在することが世界で初めて実証された。 2.生体椎間板(in vivo)では年齢によりIGF-1のmRNAの発現の差異を認めた。胎児牛椎間板脊索細胞ではmRNAの発現が活発に認められた。一方成牛椎間板ではin vitro培養細胞系ではmRNAは発現したが、in vivo髄核細胞ではほとんど認められなかった。以上よりIGF-1を介する椎間板の基質合成調節機構は成人期に比べて成長期により関与しているといえよう。 椎間板の基質代謝調節機序は成長過程や細胞の環境変化に応じて複雑な様相を呈するといえる。今後は人腰椎の変性椎間板における基質代謝の実態解明が望まれる。
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