研究概要 |
本研究の目的は、大腿部の筋のMRI画像により、老化及び臥床による筋の萎縮の状態を評価し、どの筋が老化及び臥床により萎縮しやすいかを若年者と比較することにより明らかにし、ねたきりにならないための効果的な運動を推測することである。今年度は、高齢者の大腿部の筋の形態特性を若年者と比較し、加齢による変化を検討したので報告する。 対象は、高齢群として6名の高齢者(平均年齢63.7歳)と対照群として15名の若年者(平均年齢23.6歳)とした。筋断面像は、MRI装置を用い、大腿骨の長軸方向に対し垂直に連続した1cm間隔の断面像を脛骨上端部より上前腸骨棘までを撮像した。得られた大腿部の断面像を肉眼的に縫工筋、薄筋,半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋、外側広筋、中間広筋、内側広筋、大腿直筋、内転筋群に識別した後、画像処理システムを用い、各筋の断面積を算出した。なお、断面積は大腿長(大転子〜膝関節裂隙)遠位部より10〜100%の10等分での各部位で求めた。 その結果、高齢群の筋の形状は対照群と同様の傾向を示し、最大断面積を示した部位も変化を示さなかった。筋と脂肪の構成比率では、高齢群の方が脂肪量が多く、特に大腿長の70%部位では筋40%脂肪55%と脂肪の占める比率が筋よりも大きくなっていた。(対照群では筋48%、脂肪48%)。筋の構成比率では、大腿四頭筋の比率が高齢群において低下していたが、大腿四頭筋個々の筋の低下率には大きな違いは見られなかった。ハムストリングスはわずかに低下し、縫工筋と薄筋は変化を示さなかった。一方、内転筋群は比率が高くなる傾向にあった。 今後は、対象を80歳代の高齢者やねたきり老人まで広げ、老化や臥床が筋に与える影響を明確にしていく予定である。
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