我々は、これまでに、ヒト膝半月板組織に存在するプロテオグリカンは、関節軟骨のプロテオグリカンと同一のものであることを証明している。そこで、今回は、ヒト膝半月板細胞ならびに関節軟骨細胞を分離し、その機能を維持する培養系を用いて、プロテオグリカン遺伝子の発現状況について検索した。すなわち、ヒト膝内側半月板と関節軟骨を採取し、0.8%プロナーゼおよび0.4%コラゲナーゼ処理を行って細胞を分離し、単層培養を行った。培養後、1週が経過した細胞に軟骨細胞の基質合成量を増加させるTGF-β(trans forming growth factor-β)を種々の濃度で加えた後、培養液中に^<35>Sを添加して、タンパク質レベルでのプロテオグリカン合成能を測定し、細胞成分からRNAを抽出してnorthern blot解析を行った。その結果、単層培養系における半月板細胞の軟骨型プロテオグリカン、すなわちアグリカン遺伝子の発現は、関節軟骨細胞の約30%であった。また、単層培養を長期間行うと、両者の細胞ともにアグリカン遺伝子の発現は減少した。次に、培養液にTGF-βを添加すると両者の細胞ともに加えた濃度に比例してアグリカン遺伝子の発現は増加した。以上のことから、ヒト膝半月板細胞は、関節軟骨細胞と同様にアグリカン遺伝子を発現し、さらにTGF-βによってその合成能が増加することが判明した。また、長期間の単層培養により半月板細胞の基質合成能は低下し、軟骨細胞における脱分化と同様の現像が認められた。こうした結果から、ヒト膝半月板細胞は、関節軟骨細胞と類似した性質を有するものと考える。
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