研究概要 |
人工股関節及び人工膝関節再置換術時に得た人工関節周囲膜様組織をパパインで処理し、抽出した人工関節摩耗粉(骨セメント、金属粒子、及び ポリエチレン粒子)の大きさ、形、成分を蛍光X線解析、走査型及び透過型電子顕微鏡を用いて分析した。その結果人体内で生じる摩耗粉の大きさは1マイクロン以下のものが約90%を占めていた。さらに平均サイズでは人工股関節周囲膜様組織より抽出した摩耗粉(平均:0.6-0.7マイクロン)が人工膝関節周囲膜様組織より抽出した摩耗粉(平均:0.9-1.0マイクロン)より小さい傾向にあった。これらの摩耗粉はマクロプァージ及び滑膜細胞に貧食されたが、両細胞ともに粗面小胞体が著明に増大していた。 一方、ビ-グル犬の膝関節内に挿入したインプラント(5mm×20mmの円柱棒)に加え、これらの摩耗粉を膝関節内に注入したところ、インプラント周囲に骨吸収が生じた。採取した軟骨細胞及び滑膜細胞を生化学的、組織学的、及び免疫組織学的に検索したところ、生化学的には、軟骨細胞及び滑膜細胞培養上清中に高濃度のIL-1,IL-6,TNF-αと低濃度のTGF-β,BMPが検出され、免疫組織学的には、マクロファージ、滑膜細胞、及び血管内皮細胞がサイトカイン産生細胞(IL-1,IL-6,TNF-α)であったことを明確にした。
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