研究概要 |
動物モデルを用いて関節軟骨破壊における血清中のケラタン硫酸値と軟骨型プロテオグリカン分子サイズの変化を検討した.プロテオグリカンに基質特異性の高い蛋白分解酵素であるキモパパインを家兎膝関節に注入し動物モデルとした.血清ケラタン硫酸値はキモパパイン注入6時間後に注入前の約3倍まで上昇した.ゲルクロマトグラフィーカラムを用いて血清中の軟骨型プロテオグリカン分子サイズを測定すると明らかに低分子化していた.この時点のサフラニンO染色による関節軟骨の組織学的検討で明らかな染色性の低下を認め,関節軟骨基質破壊が起こっていることが確認された。以上のことからキモパパインによる関節軟骨基質破壊により血清ケラタン硫酸値が上昇し,さらに軟骨型プロテオグリカン分子サイズが低分子化することがわかった. 各種関節疾患の血清中のケラタン硫酸値および軟骨型プロテオグリカン分子サイズを測定した.変形性関節症および慢性関節リウマチ患者において血清中のケラタン硫酸値および軟骨型プロテオグリカン分子サイズは,健常人と比較し有意差を認めなかった.しかし,急速破壊型関節症患者では動物モデルと同様に,血清中のケラタン硫酸値の増加と軟骨型プロテオグリカン分子サイズの低分子化を認めた.以上のことから急速な関節軟骨破壊では血清中のケラタン硫酸値は増加し,軟骨型プロテオグリカン分子サイズは低分子化することがわかった. 血清中の変化をとらえることができなかった変形性関節症および慢性関節リウマチ患者の関節液中の軟骨型プロテオグリカン分子サイズを測定した.変形性関節症と比較し慢性関節リウマチ患者で関節液中の軟骨型プロテオグリカン分子サイズが低分子化していた.このことは,関節軟骨破壊における変形性関節症と慢性関節リウマチの病態のちがいが関与していると考えられた.
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