1.研究目的 本研究は、培養血管内皮細胞を用い、これに種々の麻酔薬を負荷することにより培養上清中のエンドセリン(ET-1)およびEDRF(NO)を定量し、それらの量的変動を明らかにすることを目的とする。 2.研究方法・研究実施計画 我々はウシ肺動脈およびウシ頸動脈血管内皮細胞を培養し、これに種々の濃度の静脈麻酔薬ケタミンを負荷し培地上清中に産生されたET-1を酵素免疫測定法(サンドイッチ法)により定量した。また培地上清中のNOについても定量した。またケタミンとNO合成阻害薬(I-NAME)やアルギニンなどを同時に負荷しET-1を定量し、ET-1産生とNOとの相互関係についても検討した。また種々の濃度のケタミンを負荷時の細胞内カルシウム濃度の変化を共焦点レーザー顕微鏡により検討した。 3.研究成果 ケタミンは、ウシ肺動脈およびウシ頸動脈の培養血管内皮細胞においてET-1産生を有意に抑制することを明らかにした。またその産生抑制は、NO合成による負のフィードバックではなく、ET-1合成経路に対する直接的抑制であることが示唆された(第42回日本麻酔学会総会にて発表予定)。またケタミンは血管内皮細胞の細胞内カルシウム濃度を上昇させて有意にNO合成を促進することを明らかにした(第16回日本循環制御医学会総会にて発表予定)。 4.今後の展開 現在他の静脈麻酔薬ミダゾラム・プロポフォール・チアミラールについても同様に検討中である。今後はET-1のmRNAの合成に対するケタミンの影響についてPCR法により検討し、ET-1産生抑制の細胞内機序について更に明らかにしたい。また、吸入麻酔薬のET-1.NO産生に対する影響についても検討予定である。
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