1.ラットのin vivo除神経骨格筋モデルにおいて脱分極性筋弛緩薬であるサクシニルコリン(SCh)投与がどのような反応を示すのか、^<31>P-NMR法を用いエネルギー代謝の面から観察した。その結果、除神経骨格筋ではSChが誘発する筋攣縮により細胞内のATPが大量に消費され一時的に枯渇状態となり、、アシドーシスが進行することが判明した。また比較した正常筋の方では対称的に、このようなエネルギー反応は全く認められなかった。 2.除神経骨格筋における上記異常反応を阻止するため、3種類の非脱分極性筋弛緩薬(ペクロニウム、ミダゾラム、硫酸マグネシウム)により筋攣縮を抑制してみた。その結果、これらの薬剤は電気生理学的に除神経骨格筋の筋攣縮を正常筋の筋攣縮以下に抑制し得た(筋電図による比較)。しかし^<31>P-NMR法では上記異常反応は完全に消失しなかった。 以上より、今回除神経骨格筋においてSChにより誘発されたエネルギー代謝の異常は、単に従来より考えられていた正常筋より強い筋攣縮のためだけではなく、むしろ神経支配の無い骨格筋ではわずかな収縮でも多量のエネルギー浪費が起こるためと考えられた。わが痲酔科学領域において、このような骨格筋におけるエネルギー浪費は悪性高熱症でも認められる。現在われわれは除神経骨格筋でのエネルギー浪費のメカニズムが本症と同じCa^<2+>依存症のものなのかどうかダントリウムによる抑制効果を検討中である。
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