ディジタルシグナルプロセッサDP1200を用い、健康成人の麻酔導入時の聴性脳幹反応を測定した。今回の実験によりASSR測定および解析の諸条件は、聴覚刺激として105dBのクリック音を40Hzの頻度で与え、Al-Cz・A2-Czからの2チャンネルの導出脳波を100msecのサンプル長として200回加算しフーリエ変換後、40Hz成分の強度を記録すればよいことが判明した。これにより、20秒(100msec×200回/1000)毎にASSR強度の計測が可能となり計測頻度の増強が可能となった。今回ソフトウエアの自動処理を進め、20秒毎に発生するマーカーに対するレスポンスの自動記録とASSR強度の自動記録、およびこれらの測定結果の表示・印刷・保存が可能となった。 今回開発したASSR測定装置を使用して、5人の健康成人を対象にマスクによりイソフルレンないしはセボフルレン吸入時(純酸素下)のASSR強度を測定した。前麻酔は行わなかった。入眠時(音刺激に対する反応消失時)の呼気終末麻酔薬濃度はそれぞれ、0.81%(0.7MAC)、1.01%(0.59MAC)であった。さらに、その時点でのASSR強度はそれぞれ覚醒時の53%、48%であった。今回の結果から、音刺激に対する反応消失時のASSR強度はイソフルレンとセボフルレンでほぼ等しいことがわかった。また、浅麻酔時のASSR強度はその吸入麻酔薬の%MACに相関することが推測される。 今後、対象者数を増やすとともに他の吸入麻酔薬との比較を行いたい。さらに、今年度は未だ実現できなかったが静脈麻酔薬による入眠時との比較を行いたい。将来的には、前麻酔による影響を確認したい。
|