重症急性膵炎による呼吸不全2例、術後呼吸不全3例、肺高血圧3例の人工呼吸患者に対し一酸化窒素(NO)吸入を行った。[方法]5から30ppmのNOを吸入させ吸入開始30分後に効果を調べた。NOの体内への取り込み及び副作用の指標としてメトヘモグロビン、血漿Nitrate+Nitrite濃度を測定した。[結果]急性膵炎による呼吸不全症例ではPaO2/FiO2 ratioの改善が認められた。改善度は吸入NO濃度と相関しなかった。1例では肺動脈圧/体血圧(Pp/Ps)の低下がみられた。シャント率は改善を示し改善度とPaO2/FiO2 ratioの改善度は一致する傾向がみられた。術後呼吸不全の患者で術前から肺機能の定価していた症例では効果がなかった。肺高血圧症例では僧帽弁置換術後の2例ではPp/Psの改善は得られなかったが心筋梗塞後では低下が見られた。長期肺高血圧症例では吸入前のPaO2/FiO2 ratioは正常であったがNOにより逆にPaO2/FiO2 ratioの低下がみられた。ヘモグロビンはNO吸入開始後上昇を示し中止後減少した。血漿Nitrate+Nitrite濃度もNO吸入で上昇した。今回の症例では全例にNOのとりこみがあったと考えられる。今回の吸入濃度では濃度依存性は得られず5ppmという低濃度でも有効だった。[考察]呼吸不全症例ではPaO2/FiO2 ratioの改善が得られたがシャント率の改善程度と相関する傾向がみられた。機序としてシャント率改善が寄与する可能性が考えられる。心筋梗塞による急性肺高血圧に対しては肺血圧低下作用が見られたが長期の肺高血圧症例では効果は得られず器質的変化のある肺高血圧には無効である可能性がある。NO吸入濃度では5ppmで効果が得られ吸入濃度を上昇させても効果は相関せず低濃度で治療効果が得られるものと考えられる。
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