研究概要 |
ラット前脳虚血モデルにおけるイソフルランの作用に対する一酸化窒素合成阻害薬(nitric oxide synthase inhibitor,NOSI)N^G-nitro-L-arginine methyl ester hydrochloride(L-NAME)の影響を行動学,組織学所見より評価し,以下の結果を得た. Wistar系ラットをイソフルラン麻酔下に気管内挿管し,調節呼吸を行なった.準備手術終了後対照群,L-NAME群,チオペンタール群に分け,対照群,L-NAME群はイソフルラン2〜3%麻酔下に,生理食塩水あるいは,L-NAME10mgkg^<-1>を投与した.チオペンタール群はイソフルランを中止し,チオペンタール2〜3mgkg^<-1>min^<-1>の速度で投与した.各群とも脳波上バーストサプレッションを確認後,トリメタファン静注と脱血で低血圧(35mmHg)を維持しつつ,両側総頚動脈をクリップで10分間閉塞し,開放後脱血した血液を返血して一過性脳虚血とした.ラットを麻酔より覚醒させ,3日後オープンフィールドでの活動性および運動機能を評価した後,脳を灌流固定し,組織学的評価を行なった.活動性はチオペンタール群が良好な傾向があった.線条体,海馬,大脳皮質の神経細胞傷害の程度は3群の間に差がなかった.まとめると,脳波上バーストサプレッションを目標に脳代謝を同程度に抑制しても,イソフルランは行動上チオペンタールより悪い傾向を示し,イソフルランの脳血流増加作用をNOSIで拮抗しても改善はみられず,チオペンタールとイソフルランの虚血後神経傷害に及ぼす影響の差異に脳循環・代謝以外の因子の関与が示唆される.
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