当該年度はイソフルレンを中心に行った。(デスフルレンが気化器、薬品とも輸入できなかったため) 実験動物として家兎を用い、バルビツレートにて就眠させて調節呼吸を行った。直ちに、大腿動静脈からカテーテルを挿入し、圧トランスデューサ、増幅器に接続し動脈血圧及び中心静脈圧を測定しその後、顕微鏡下に腎交感神経を剥離、双極電極を用いて交感神経活動を導出、増幅器を通した信号を活動電位頻度測定装置で計算させ積分値を変換装置を通してコンピュータに表示させた。 1)イソフルレンの交感神経興奮作用を引き起こす濃度の解明 イソフルレンを家兎にそれぞれ1%、2%、3%、4%濃度にて吸入させ、交感神経活動を記録観察した。 この結果より、交感神経活動はイソフルレンの濃度依存性に上昇することが明らかにされた。 2)イソフルレンの交感神経興奮作用の機序の解明 家兎をA)迷走神経切断群、B)圧受容体反射遮断(両側迷走神経、両側大動脈神経、両側頚動脈洞神経切断)群に分けそれぞれの群の中で、1)で求めた揮発性麻酔薬濃度に設定し、交感神経活動の増強の有無を観察した。 A)迷走神経切断群 迷走神経切断のみではイソフルレンの交感神経興奮作用は1%、2%、3%、4%のどの濃度において消失しなかった。 B)圧受容体反射遮断群 全ての圧受容体反射を遮断するとイソフルレンの交感神経興奮作用は1%、2%、3%、4%のすべての濃度において50%程に減弱するものの完全には消失しなかった。 これらの結果より、イソフルレンの交感神経刺激作用は中枢への直接刺激に、圧受容体反射が加わったものであることが示唆された。 3)イソフルレンの交感神経興奮作用を有効に防止する方法の解明 A)節遮断薬(ヘキサメソニウム)を投与するとイソフルレンの交感神経興奮作用はほとんど抑制された。 この結果より節遮断薬はイソフルレンの交感神経興奮作用防止に有効である可能性が示唆された。
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