1.外液カルシウムイオン存在下で、高カリウム脱分極(40mM k^+)あるいは、カルバコール(10^<-7>M)による収縮中にミダゾラムを累積的に投与(10^<-7>〜10^<-4>M)すると、濃度依存性に細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)と張力の低下が見られた。 2.高カリウム脱分極下に外液カルシウムイオン濃度を変化させることにより[Ca^<2+>]i-張力関係を求め、これに対するミダゾラムの作用を調べた。ミダゾラム(3×10^<-5>M)は、外液カルシウムイオン濃度上昇による[Ca^<2+>]i、張力の上昇をいずれも抑制したが、[Ca^<2+>]i-張力関係には変化を生じなかった。 3.非選択的な陽イオンチャネルブロッカーであるニッケル(3×10^<-5>M)存在下にカルバコールを投与すると一過性の[Ca^<2+>]iと張力の上昇を生じるが、ミダゾラム前投与はこの一過性の[Ca^<2+>]iと張力の上昇に対し何の影響も与えなかった。 4.外液カルシウムイオンの無い状態で、カルバコールあるいはカフェイン(20mM)による一過性の[Ca^<2+>]iと張力の上昇に対し、ミダゾラムは何の影響も与えなかった。 5.中枢性ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬であるフルマゼニール(10^<-5>M)、及び末梢性ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬であるPK11195(10^<-5>M)は、カルバコール収縮に対するミダゾラム(10^<-5>M)の[Ca^<2+>]i及び張力への低下作用に影響を及ぼさなかった。 以上より、ブタ気管平滑筋において、臨床使用濃度のミダゾラムは、細胞内Ca^<2+>放出や収縮器のCa^<2+>感受性には作用せず、高K脱分極やカルバコール刺激によるCa^<2+>流入の抑制により、[Ca^<2+>]iを低下させ、[Ca^<2+>]i低下に見合った弛緩を引き起こすと考えられる。またこの作用は、フルマゼニール及びPK11195により拮抗されるベンゾジアゼピン受容体を介したものではないと考えられる。
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