今年度の実績の一部はすでにCirculatory Shock誌に報告している。そこで以下、そのエンドトキシン血症時に骨格筋および肝臓における細胞外液中の乳酸濃度がどのように変化するかについて報告した発表および論文の内容について簡単に述べる。 【方法】雄性Wistarラットを用いた。イソフルレンによる麻酔導入後、気切をおこない、パンクロニウムおよびイソフルレン投与下、純酸素吸入下に人工呼吸をおこなった。右の大腿動静脈にカニュレーションを行ない採血および薬物投与路とした。また、左鼠経部の筋肉および肝臓内に微小透析プローブを挿入し、生理食塩水にて10μl/minの速度で環流をおこなった。ラットは2群にわけ、一群はE.coil lipopolysaccharide Bを5mg/100g投与し、その後1.4%重炭酸ナトリウムを0.5ml/100g/hrの速度で輸液した(エンドトキシン投与群、n=9)。もう一群は1M乳酸を0.1ml/100g投与後、1M乳酸-1.4%重炭酸ナトリウム混合液を0.5ml/100g/hrの速度で輸液をおこなった。(乳酸投与群、n=6)。微小透析環流は3時間行ない10分ごとに透析液を回収した。筋肉および肝臓における細胞外液中乳酸濃度は透析液中の乳酸濃度をin vivoにてあらかじめ計測した回収率で除することによってもとめた。 【結果】エンドトキシン投与群の3匹は実験中に死亡したため、残りの6匹について検討した。血液中の乳酸濃度はエンドトキシン投与後すぐに上昇し、実験中3-4mMのレベルを維持した。一方、筋肉および肝臓における細胞外液中乳酸濃度はそれぞれ対照値の0.94±0.09mMおよび1.18±0.16mMから、実験終了時にはそれぞれ、1.96±0.20mMおよび1.27±0.16mMに上昇した。しかし、これらの値は血液中の乳酸濃度に比べて常に有意に低値を示した。一方、エンドトキシン投与群は乳酸投与群に比べて血液中乳酸濃度には有意な差がみられなかったにもかかわらず、筋肉内の乳酸濃度は有意に高値を示した。 【考察】エンドトキシン血症時において、筋肉および肝臓は乳酸を消費していると考えられた。しかし一方で筋肉における乳酸消費能力がエンドトキシン投与後、次第に低下する可能性が示唆された。
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