Working heart preparationによる虚血再潅流モデルとしては、前負荷30分間停止の完全虚血モデルを作成した。循環動態は、心拍数、左室圧、左室dp/dt、心拍出量、冠動脈流量は、再潅流30分までにそれぞれ虚血前値の80%、72%、73%、68%、73%に回復し、以後60分まで漸減した。潅流液中酸素遊離基は、PBNをスピントラップ剤とすると再潅流5分に若干の増加を示した後、徐々に増加し、60分以降にピークを迎えた。MNPをスピントラップ剤とすると再潅流5分後に若干の増加を示すが、有意差を認めず、潅流液中のNO発生の主体は白血球によるものてであると考えられた。各トラップ剤によるラジカルの同定が今後の課題である。ポーラログラフィー法による心筋内NO測定では、虚血中にNOが低下し、再潅流直後に一過性の著明な増加を示したが、以後は虚血前値に復し一定していた。再潅流直後の著明な増加は有意ながら、微量発生のNO測定に比し、心臓自体による拍動等のアーチファクトが大きく、本法による測定にはさらに検討を要すると考えられた。 結論として心臓虚血再潅流により潅流液中酸素遊離基は2相性に再潅流直後および60分以降にピークを迎えるが、NOは潅流液中では、再潅流直後に一過性に増加する傾向を示し、また心筋内NOは同様に再潅流直後に一過性に増加を示した。本結果においては、NOが再潅流時に影響するとすれば、量的には白血球由来の関与が大きいと考えられる。さらに、NO関連の薬剤による影響および全血を用いた潅流モデルを使用した検討を必要とする。
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