研究概要 |
骨盤内リンパ節は,前立腺癌の最も重要な標的転移臓器のひとつである。全身的副作用,局所障害が少なく,骨盤内悪性腫瘍およびリンパ節へのより強い抗腫瘍効果を得る治療法として抗癌剤封入リポソームの経直腸的,経会陰的注入の有用性について検討した。 【方法】8週齢のウィスターラットの前立腺周囲にメソトレキセートを単体で投与した場合,リポソームに封入し経会陰的に投与した場合,もしくはメソトレキセートを経静脈的に投与した場合の3投与法で血中濃度,体内臓器分布を比較した。また,投与前後の全血算,肝,腎機能検査により全身的副作用,注射局所の組織検査により局所障害について検討した。さらに,ヒト前立腺癌由来培養細胞株PC-3で,ヌードマウスに腫瘍を造り,メソトレキセート,リポソーム封入メソトレキセートを腫瘍内に注射し,抗腫瘍効果を比較した。 【結果】メソトレキセートをリポソームに封入し投与すると他投与法に比し,血中濃度は低く,前立腺,骨盤内リンパ節への高濃度のメソトレキセートの移行を認めた。他の臓器(肝,腎,脾等)への組織内濃度に関しては差を認めなかった。全身的副作用に関しては,大量投与(10mg/kg)では,軽度の骨髄抑制を認めたが,他の検査値に異常を認めなかった。抗腫瘍効果に関しては,現在検討中である。 以上よりリポソーム封入抗癌剤の経直腸的,経会陰的投与は骨盤内悪性腫瘍,骨盤内リンパ節転移の治療法として臨床応用できる可能性があると考えている。
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