【目的と方法】ヒト前立腺肥大症における上皮細胞と間質細胞のFGFを介したお互いの細胞増殖調節機構を追求することを目的として、ヒト前立腺肥大組織から上皮細胞と間質細胞をそれぞれ分離、培養し、上皮細胞ならびに間質細胞におけるFGFおよびその受容体(FGFR)の発現についてRT-PCR法にて検討した。ヒト前立腺肥大組織においても同様な検討を行った。 【結果】FGF-1、FGF-2、FGFR-1は上皮細胞および間質細胞のいずれにおいても発現が認められた。FGF-7は間質細胞に発現していたのに対して、上皮細胞には発現が認められなかった。FGFR-2(exon IIIb)、FGFR-4は上皮細胞に発現していたのに対して、間質細胞には発現が認められなかった。前立腺肥大組織は今回検討したFGF-1、FGF-2、FGF-7、FGFR-1、FGFR-2(exon IIIb)、FGFR-4のすべてを発現していた。 【考察】今回の検討において上皮細胞および間質細胞におけるFGFおよびFGFRの発現は異なっており、上皮細胞と間質細胞はFGFを介してお互いの細胞増殖を調節しているものと考えられる。とくに、間質細胞で産生されたFGF-7がFGFR-2を介して上皮細胞に作用する機構がヒト前立腺において存在し、ヒト前立腺肥大症の発症に関与していることが示唆される。今後はアンドロゲンとFGF-7との関係についての検討を行う予定である。
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