まず腎移植患者の尿中CaおよびPについて検討した。尿中Ca/Creaは、移植腎機能が良好な群においては0.095±0.065(n=27)、移植腎機能が低下している群においては0.031±0.026(n=21)であった(p<0.01)。尿中P/Creaは移植腎機能が良好な群においては0.56±0.19、移植腎機能が低下している群においては0.55±0.12であった(n.s.)。すなわち移植後腎機能が低下すると尿中Pは変化せずに尿中Caが低下することがわかった。 次にCa、P代謝に関係のある血液中のPTH(parathyroid hormone)、Ca、Pを測定した。HS-PTHは腎機能良好群で1168±593pg/ml、腎機能非良好群で10720±9580pg/mlであり、腎機能良好群において有意に低値であった(p<0.001)。血清Ca値は腎機能良好群で2.35±0.13mmol/l、腎機能非良好群で2.2±0.27mmol/lであり、腎機能良好群において有意に高値であった(p<0.05)。また腎機能非良好群ではビタミンD製剤を投与されている症例が多いことが原因と考えられるが、ばらつきを認めた。血清P値は腎機能良好群で0.75±0.19mmol/l、腎機能非良好群で1.48±0.51mmol/lであり、腎機能良好群において有意に低値であった(p<0.001)。 以上のことから、腎移植後腎機能が低下すると上皮小体機能が亢進するために、腎臓の尿細管におけるCaの再吸収が増加するとともにPの再吸収が抑制され、結果として尿中Pは変化せずに尿中Caが低下することが推測された。今後は健常人との比較をおこない、腎移植患者のCa、P代謝のバランスについてさらに研究を進めたい。
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