研究概要 |
1.組織の採取、加温、粗細胞膜分画の作成:α-adorenoceptorが多く存在することが知られているモルモットの精管を用い、摘出精管はO_2投与下のTyrode液中にて2群に分けた。両側精管の一方はtest群として60分間の加温(43,50,55℃)をし、他方は対象群として4℃以下に氷冷した。その後Tris-buffer(pH7.5)を加え粗細胞膜分画を作成した。 2.結合実験:^3H-Prazosinを用いradioligand binding法(横山ら、日泌尿会誌、76,325-337,1985)により、α_1-adorenoceptorの定量を行った。粗細胞膜分画と^3H-Prazosinとbinding assayを行いScatchard plotを用いた解析によって最大結合受容体数(NBS)と親和恒数(Kd)を算出した。 3.結果及び考察:43℃の加温ではNBSは0.68±0.10pmol/mg protein,Kdは0.88±0.12nMであり、対照群のNBSの0.65±0.06pmol/mg protein,Kdの0.89±0.14nMと比較し有意差を認めなかった。一方、50.55℃の加温ではNBSは0.58±0.19pmol/mg protein,0.51±0.32pmol/mg proteinであり対照群の0.79±0.29pmol/mg protein,0.78±0.35pmol/mg proteinに比べ減少を認めた。また粗細胞膜分画の蛋白量は対照群を100%としたとき43,50,55℃ではそれぞれ90,72,61%と減少した。 43℃の加温ではα_1-adorenoceptorへの影響はないが、50,55℃では受容体数の減少が認められた。今後43〜55℃の条件下での実験及びヒト前立腺における同様の実験を予定しているが、前立腺内部を約50℃以上に加温する高温度療法ではα_1-adorenoceptorへの影響が治療効果に関与しているものと考えられた。
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