研究概要 |
婦人科腫瘍の発生メカニズムを解明する目的で、婦人科腫瘍細胞株(卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、絨毛癌)や実際の婦人科腫瘍組織を用いて、癌抑制遺伝子p53,RbさらにCDK4inhibitorであるp16^<INK4>についての分子生物学的検討を行っている。平成6年度は特に絨毛癌細胞株についての癌抑制遺伝子p53の解析を行った。実際に用いた絨毛癌細胞株はBewo,GOH-1,GCH-2,SCH,JAR,JEG-3,NUC-1,HCCM-5の8株を用いた。各々の細胞株より抽出したgenomicDNAをHindIII,PvuII,BamHIにて消化後のSouthern blot.ではcontrolの胎盤に比べて異常は認められなかった。また各々の細胞株よりtotalRNAを抽出し発現レベルをNorthem blot.にて解析したところ。GCH-2,JAR,NUC-1細胞株においてcontrolの胎盤に比べて発現低下がみられた。さらにp53遺伝子の構造異常をDNAの塩基配列を調べることにより検討するとSCH株ではコドン249-250間にAGGつまりArg.の挿入という異常がみられ、JEG-3株ではコドン167がCAGからCATへの点突然変異が見られ、アミノ酸レベルではGlnからHisへの置換がみられた。またNUC-1株ではコドン17にGAAからGATへの、コドン24にAAAからAATへの点突然変異が見られ、各々アミノ酸ではGlnからAsp、LysからAsnへの置換が見られた。異常のように絨毛癌においても癌抑制遺伝子p53の不活性化がその発癌に関与していることを世界で初めて明らかにした。
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