研究概要 |
子宮内胎児発育遅延(IUGR)の病態解明は周産期領域における大きな課題である。これまで私は、EGFの胎児発育における生理作用をEGF欠乏マウス動物モデルを用いて検討し、(1)母獣のEGF欠乏が脳重量が比較的保持されるasymmetrical IUGRをもたらすこと、(2)このIUGR胎児では、血漿中並びに臓器中のグルコース濃度が低下していること、(3)さらにその原因として、胎盤でのグルコースの選択的輸送障害が示唆されること、を明らかとしてきた。さらに本年度は、この動物モデルを用いて以下の事柄を明らかとした。 【1】Western blot analysisによる、上記動物モデルでの胎盤のGLUT1,GLUT3の蛋白発現量の比較では、これら両者の胎盤における発現レベルには有意差を認めなかった。 【2】in situ hybridization による、上記動物モデルの、胎盤でのGLUT1,GLUT3のmRNAの局在の検討では、GLUT1 mRNAの局在には有意差を認めないものの、GLUT3 mRNAは胎児側においてその発現が有意に低下していることを明らかとし、GLUT3の胎盤の胎児側での限局された発現障害が、asymmetrical IUGRの原因である可能性が示唆された。 【3】胎児臓器においては、IUGR胎児では、肝臓ばかりか比較的重量の保持されている脳においても、GLUT1の発現が増加していることを明らかとし、IUGR胎児では、低血糖に対する代償反応としてGLUT1蛋白の発現増加が起きていることが推測された。
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