研究概要 |
目的:出生前診断のための母体血中胎児由来細胞の分離濃縮及びその効率の検討。 方法:細胞表面抗原を用いての細胞濃縮後、PCRおよびFISHを用いて検討した。 結果:(1)single cell PCRの再検討 男性および女性リンパ球1個相当のDNA量でPCR感度の再検討を行なった。感度を上げるために従来のSRY領域に加えて反復配列(DYZ3,DXZ1)を対象に検討したが、それでも正診率は80〜90%であった。 (2)single cell FISHの確立 X,Y特異的塩基配列(DYZ1,DYZ3,DXZ1)による2 color FISHの技術は確立したがスライドへの付着率が95%程度と推定されることと、非特異的反応あるいは洗浄が不十分のための偽陽性が2〜3%であり総合的に正診率は90%程度となった。 (3)母体血中胎児由来細胞の分離濃縮 抗CD71抗体および抗GPA抗体付着の磁気ビーズを用いて検討したが抗原陽性細胞は少なく期待する効率は得られなかった。胎児が男児の場合でY染色体陽性細胞はいずれも1%以下であった。PCRで胎児細胞の濃縮率を検討するためのには細胞1個のみを顕微鏡下に分離捕捉することが必要だが手技的にかなり難しかったため充分な細胞数を検討できなかった。FISH法では多数の細胞を1度に検討できたが、磁気ビーズに付着した細胞はスライドグラスから剥離しやすく観察できた細胞数は細胞固定前に比べて約10%であった。そのため細胞膜を溶解し核のみを固定しFISH法を試みようとしたが核の回収ができず断念した。現在、培養フラスコ底にモノクローナル抗体を付着させたものを利用し濃縮効率の改善が得られるかどうかを検討中である。 結論:充分に満足のいく結果が得られなかったが、次年度には1細胞の捕捉、固定などを中心とした技術の熟達を図り、原因の検索および解決を行うために研究を継続する予定である。
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