1.体癌由来培養細胞株SNG-IIのモクローナル抗体MSN-1認識抗原の有無による亜株への分別:マイクロセレクター及び限界希釈法を用いて、SNG-IIをMSN-1認識抗原(主としてLewis^b型糖鎖)を発現する細胞(SNG-S)と発現しない細胞(SNG-W)へ分別する事に成功した。 2.分別細胞の生物学的特性の検討 (1)増殖能及びDNA ploidy:Cell Analysis Systemを用いた検討の結果、両者の増殖能及びDNA ploidyには大きな差のない事が判明した。 (2)形態学的特性:in vitro、in vivoにおける両者の形態には差がみられ、SNG-Sはより分化傾向を示す事が判明した。すなわち、複合糖質が分化度と関連を有する可能性が示唆され、現在検討中である。 (3)組織接着能:ヒト及びヌードマウス各臓器のAMex包埋切片を用いたin situ adhesion assyaの結果、SNG-WはSNG-Sに比べ約10倍の高い接着能を有する事、しかもその接着にSNG-Wで強い発現が見られるMSN-1認識抗原の前駆糖鎖が強く関与する事が判明した。しかもこの糖鎖の発現はα1-4フコース転移酵素活性の支配を受けている事を明らかにした。 (4)遠隔転移能:ヌードマウスを用いた分別細胞の尾静注モデル及び子宮正所性移植モデルにおける肺転移率を検討した結果、SNG-WはSNG-Sに比べいずれのモデルにおいても明らかに高い遠隔転移能を有する事が判明した。 以上より子宮体癌の転移に、フコシル化糖鎖のひとつであるMSN-1認識抗原の前駆糖鎖が強く関与する事が示唆され、現在その構造及びリガンドの決定と、新たな転移抑制の可能性について検討中である。
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