研究概要 |
1.スルファチドの分解酵素であるアリルスルファターゼA(ASA)の活性を、増殖期と分泌期の子宮内膜中で測定、比較したところ、分泌期に比較して増殖期において酵素活性が約2倍に亢進していることが明らかとなった。また、同時に検討した硫酸基転移酵素(ST)の活性は増殖期に比較し分泌期において酵素活性が約5倍に亢進していた。したがって性周期に伴う内膜中のスルファチドの発現調節にASAとSTの両者が関与している可能性が示唆された。 ステロイドホルモン添加時におけるIshikawa株でのASA活性の発現を比較、検討したが、酵素活性には大きな変動を認めなかった。しかしST活性はE+P添加群において約2倍の活性亢進を認め、体癌細胞株の硫酸化糖脂質の発現にSTを介してステロイドホルモンが関与している可能性が示唆された。 2.体癌組織と正常子宮内膜でのASAの活性を比較、検討したところ、体癌組織においてその活性が亢進する傾向が認められた。また、体癌由来細胞株と他組織由来悪性細胞株でASA活性を比較すると、体癌由来細胞株においては高い酵素活性を認めるのに対し、他の株では低値を示した。また同時に測定したST活性も体癌組織、体癌由来培養細胞株において著明に高くなる傾向が認められた。したがってASA,ST活性の亢進は体癌に比較的特異的に認められる現象である可能性が示唆され、体癌の生物学的特性の一つに硫酸化糖脂質の合成、代謝の亢進があるものと思われた。 3.RT-PCR法によりASAのmRNAの発現を増殖期、分泌期の子宮内膜中で比較、検討したところ、増殖期、分泌期ともにASAのmRNAの発現を認めたが、発現量には大きな変化は認められなかった。
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