研究概要 |
細胞性免疫の担い手であるT-cellは前駆細胞が骨髄より胸腺に遊走し胸腺上皮細胞に‘教育'されることによって自己の認識し分化成熟する。その際にpositive/negativeの2段階の選択を受ける。近年,腸管粘膜や皮膚など末梢において成熟分化するT-cellの存在が注目される。これは胸腺におけるような選択を受けないためにautoreactive T-cellが存在し、外界との接点における第一線の免疫に重要な役割を果たしている。我々はもう一つの外界との接点である脱落膜に注目しここに分化するT-cellの有無を検索した。 脱落膜は妊娠により子宮内膜に形成され移植免疫学的には異物である胎児胎盤の認識とその生着に積極的に関与していると可能性がある。我々は未分化なIg遺伝子やTCRの再構成に必須のRAG-1,2発現をRT-PCR法によって検討し、妊娠初期-後期に得られた全例の脱落膜組織に発現することを明らかにした。RAG発現がB-cellのclass switchに由来する可能性を否定するために脱落膜単核細胞の抗Ig処理を行なったがこの操作によっても発現は減弱せず、さらにFACS分画脱落細胞では従来未分化なNKと考えられてきたCD16CD56^<bright>に強い発現を認めた。その結果この細胞の本態はNK,Tのcommon progenitorであり、母児免疫寛容に何らかの役割を有する可能性がある。 現在,さらに脱落膜T-cellのTCRレパトアを解析中であるが,正常妊娠ではVγ1細胞が著しく多いことよりよりこれが認識する胎児胎盤の対応抗原について解析し母児免疫における意義を検討している。
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