癌の予後因子として臨床病期分類、病理学的検索とともに核DNA量、細胞増殖率が最近注目されている。われわれはフローサイトメトリー(flow cytometory;FCM)を用い頭頚部腫瘍における核DNA量とKi-67モノクロナール抗体を用いた細胞増殖率を測定し頭頸部腫瘍の悪性度との関係を検討した。 【対象および方法】対象は頭頸部腫瘍患者99例で、悪性腫瘍末治療例57例、再発例9例、良性腫瘍33例であった。【結果および考察】我々は頭頸部腫瘍に対しKi-67モノクロナール抗体とFCMを組み合わせることにより大量の細胞で迅速かつ客観的な増殖率測定が可能であった。今回の結果で良性腫瘍のKi-67陽性率は23.3±18.9%、悪性腫瘍は32.5±18.8%で悪性腫瘍で有意に高かった(p<0.02)。悪性腫瘍でも予後が悪いといわれるaneuploid腫瘍のKi-67陽性率はdiploid腫瘍より有意に高く(p<0.01)、細胞増殖率からもa neuploid腫瘍は悪性度が高いといえた。Diploidを示す悪性腫瘍のなかでもKi-67陽性率が高い症例があったが、細胞増殖率の高い腫瘍は予後不良との報告があることからKi-67陽性率の高い腫瘍はDiploidでも悪性度が高いと考えられ今後十分な経過観察が必要と思われた。また、悪性腫瘍再発例のKi-67陽性率は41.3±21.4%で末治療例の31.4±18.4%にくらべ有意に高かった(p<0.02)。今後非再発群と再発群とで末治療時のKi-67陽性率を比較検討する必要があるが今回の結果から再発腫瘍の細胞増殖率は高いと考えられた。FCNを用い核DNA量、Ki-67陽性率を測定することは以上の結果より頭頸部腫瘍の悪性度評価に有用と思われた。
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