研究概要 |
ヒトの視運動性後眼振の正常値を求める目的で,健常者の147名の視運動性後眼振を測定し解析した.すべての被検者に,投影式視運動視激装置により60°/秒の等角速度水平性視運動刺激を45秒間負荷後の後眼振を暗所開眼にてENGで記録した.記録されたサンプル数は,0秒から180秒までの幅広い範囲に認められた.従って本研究ではOKANのI相を次の3つ,つまり10秒未満を低反応,10-59秒を中反応,60-180秒までを過大反応とし分類した.それぞれの割合は46.9%,42.2%,10.9%であった.各被験者の左右視運動性後眼振は一様ではないため,そのI相時間の組み合わせから6型9種に分類し,それらの性別,年齢別頻度と,視運動性後眼振I相の眼振数,II相の出現頻度を調べた. 1.型分類とその頻度:両側中反応型の対称性(1a型)10.9%,非対称性(1b型)15%,両側過大反応型の対称性(2a型)2.7%,非対称型(2b型)1.4%,両側低反応型の両側反応なし(3a型)と両側反応あり(3b型)25.2%,一側低反応と他側中反応(4型)31,3%,一側低反応と他側過大反応(5型)4.1%,一側中反応と他側過大反応(6型)9.5%に分類した. 2.型分類と性別,年齢別検討:性別,年齢別にみて,型分類の頻度に特徴はなく,両側低反応型(3a型,3b型)は各年代とも一様に認められた. 3.その他:視運動性後眼振I相の最大緩徐相速度平均値は8.6°/秒(SD:7.0),総眼振数平均値は22.8打(SD:14.8),右後眼振I相持続時間,左後眼振I相持続時間の平均値はそれぞれ27.3秒(SD:40.2),21.7秒(SD:34.0)であった.後眼振II相は9例,6.1%に認められたがIII相は観察されなかった. 4.健常人のOKAN-I相は低反応より過大反応まで広く分布し,左右差61.2%に認められ,性別,年齢別特徴がなく,疾患の病巣診断に本検査を利用する場合に十分な注意が必要である. 以上が本研究のまとめである.
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