難治な滲出性中耳炎の病態には、中耳粘膜の変性が大きく関与していると考え、中耳粘膜の病理組織学的検討を行っている。保存療法のみでは治癒困難な小児滲出性中耳炎例に対しチューブ挿入術を施行する際、保護者の承諾を得た上で中耳粘膜を採取した。対象は4歳から14歳までの小児滲出性中耳炎例27例34側である。中耳粘膜の変化は、上皮及び上皮下層について各々4段階に分類した。粘膜上皮の変化については、Grade I:殆ど変化なく線毛細胞主体、GradeII:分泌細胞の増加、線毛細胞の減少、GradeIII:上皮細胞の立方化、GradeIV:上皮細胞の扁平化とし、上皮下層の変化については、GradeI:殆ど変化なく上皮下の肥厚なし、GradeII:上皮下の浮腫状肥大厚、血管の拡張と増生、軽度の炎症細胞浸潤、GradeIII:細胞浸潤著明、上皮下の肥厚著明、GradeIV:上皮下の線維芽細胞、膠原線維の出現、線維化肥厚、として分類し検討を行った。中耳粘膜上皮については、GradeI 9%、GradeII 73%、GradeIII 18%、GradeIV 0%で殆どの症例で上皮の変化が認められた。一方、上皮下層の変化については、Grade I 12%、GradeII 41%、GradeIII12%、GradeIV 35%であった。また、蜂巣発育抑制例で中耳粘膜の変性が進んでおり、特に中耳粘膜下層の変化が強く認められた。以上より、滲出性中耳炎には様々な中耳粘膜の変化が観察され、上皮及び上皮下層の病態が進むと上気道炎の改善だけでは病態の治癒は期待できず、個々の中耳粘膜の病態を把握することが中耳換気チューブ挿入術後の経過及び予後を考える上で非常に重要であると思われた。 現在、成熟家兎を用いて実験的滲出性中耳炎を作成中である。9羽に滲出性中耳炎を作成し、耳管閉塞後24時間前後で中耳貯留液を認めた。閉塞後1週、2週、4週、8週例及び8週経過後貯留液を除去した例について現在経過観察中で、さらに実験例を増やしていく予定である。
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