今回深頸部膿瘍の起因菌として注目されているStreptococcus milleri(以下S.milleri)の菌体表面蛋白であるProtein Gの活性を検討する予定であったが、この1年間で臨床分離材料からのS.milleriの検出はみられなかった。しかし他のStreptococcus属を用いて以下の実験を行い新たな知見を得た。酵母菌にて感作させたウサギの血清中の抗体と酵母を一定の条件下で結合させ、この菌液とStreptococcusの菌液を混合して鏡検すると、あるStreptococcusでは酵母菌との吸着像がみられたが、大多数のStreptococcusではこの吸着はみられなかった。Protein Aを菌体表面にもつStaphylococcus aureusでは酵母に結合したウサギ血清中の抗体のFcフラグメントとProtein Aとの間でこの吸着が必ずみられることから、Streptococcusにおいても菌体表面にProtein Gをもつものではこの吸着がみられる可能性が考えられる。この知見は今回計画したS.milleriの菌体表面蛋白Protein Gの活性を検討する上で、今後有力な一助となりうると思われる。すなわち臨床分離材料からS.milleriが検出された時、検出菌がProtein Gの活性を有しているか否かを簡便に判定することが可能となると思われる。今後本法のさらなる検討も含め、深頸部膿瘍の病原因子の解明を行いたいと思う。
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