唾液分泌低下は、自律神経の調節障害や自己免疫疾患であるシェ-グレン症候群、薬物の連用による唾液分泌抑制、唾液腺の炎症、唾液腺症、放射線治療の副作用などがあげられる。またどこの唾液腺が障害をうけるかにより唾液分泌の低下は単に分泌量だけの問題でわなくその粘性、電解質、酵素等の性状に関与すると考えられる。正常耳下腺組織でも加齢に伴い腺実質が萎縮することにより唾液分泌の低下と唾液の性状の変化が起こる。 加齢に伴う唾液の分泌量、性質、電解質や酵素についての検索をおこない耳下腺組織での脂肪変性率や年齢別の正常耳下腺組織についてコンピューターグラフィクスを用い立体構築像を作製し比較検討を行なった。さらに正常耳下腺と対比させながらシェ-グレン症候群における浸潤リンパ球の特徴、導管上皮の変性過程や筋上皮島のhistogenesisを明らかにするため免疫組織化学、電子顕微鏡的および三次元構築による検討を行なった。 シェ-グレン症候群では、腺房細胞の萎縮や消失そしてリンパ球の浸潤が起きることが知られている。また、上皮性細胞の集合体である筋上皮島はシェ-グレン症候群で特徴的な所見であるが、免疫組織化学的に導管上皮に認められるKL-1やPanT比べ優位に認められるPanB陽性細胞の存在が確認された。電顕的にはトノフィラメントなどを含む導管系上皮細胞が主体であった。三次元構築による観察では導管のように分岐し連続した構造をとりことより、筋上皮島は筋上皮細胞の由来ではなく導管上皮由来の集合体と考えられた。
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