真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術を行なった際に剥離が不可能であった6症例のヒト鼓索神経について線維分析を行なった。ヒト鼓索神経の完全な再構成を行い、線維の太さ、線維数を計測し、有髄、無髄線維の構成を明かにするとともに、区画別計測法による線維の太さ、線維数の結果よりヒト鼓索神経の分析方法を検討した。 1.神経横断面積は最小面積0.059mm^2、最大面積0.110mm^2であり、平均横断面積0.081mm^2であった。 2.有髄線維総数は最少3305本、最多4668本、平均有髄線維3829本であった。また有髄線維の太さの分布は、2〜3μmにピークを認め、1〜4μmの範囲で全体の93.4%を占めていた。 3.無髄線維総数は最少2044本、最多4334本であり、平均無髄線維総数3306本であった。またSchwann cell unit数は最少791本、最多1937本、平均unit数は1386本であり、1unitに含まれる無髄線維数は、1本のものが最も多く、1〜5本のものが大多数で全体の平均93.6%を占めていた。 4.区画別計測法による線維数の計測と光学顕微鏡による観察より無髄線維には局在性が認められた。 5.区画別計測法による全体の計測値との比較では有髄線維の太さは3区画抽出することにより全面積における線維の太さの近似した分布を計測することができた。また、有髄線維では3区画、無髄線維では無髄線維の局在部位を1区画含む合計4区画の抽出により全面積の線維数の換算が可能であった。
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