口内乾燥を伴う味覚障害症例の舌乳頭の形態学的変化を観察することが目的であったが、実際には、次の問題点が存在した。 1)研究開始にあたり、科学研究費補助金による機器購入の手続きが遅れ、実際に研究を開始したのが11月からとなった。 2)味覚障害のみの症例は多く存在するが、口内乾燥を伴う味覚障害例として、本研究に該当する症例が極めて少なかった。具体的には、口内乾燥と味覚障害を訴える症例でも、薬剤の副作用による口内乾燥例で味覚は正常であったり、心因性と思われる口内乾燥例で、味覚も唾液分泌も正常であった症例が多かった。 3)該当すると思われる疾患を精査すると、多くはシェ-グレン症候群の症例であった。 4)治療により、短期間に明らかな舌乳頭の変化が認められる症例が少なく、回復過程の観察には、比較的長期間を要することが判った。 5)以上より、現段階では、研究成果を報告できるまでには至っていない。 今後の課題として、 1)口内乾燥を伴う味覚障害症例の舌乳頭を観察を引き続き行う。 2)しかし、該当する症例数が少ないため、口内乾燥を呈する代表疾患として、シェ-グレン症候群の舌乳頭所見の観察も含める。シェ-グレン症候群は、高度の口内乾燥のため味覚障害を合併すると考えられているが、実際には、口内乾燥が存在しても味覚障害を合併する症例と合併しない症例が存在する。口内乾燥が存在しても必ずしも味覚障害を合併しない点が興味深い。シェ-グレン症候群における口内乾燥の程度と舌乳頭の形態学的変化および味覚障害の重症度との関連性についても検討し、報告する予定である。
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