研究概要 |
ラジカルを介して腫瘍壊死作用を示すTNFαあるいは数種の抗癌剤に対し、悪性黒色腫など数種の癌は抵抗性を示す。フリーラジカルを消去する生体内酵素の一つであるスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)を、NBT法あるいは抗Mn-SOD抗体を用いたELISA法にて測定を行うと、特にミトコンドリアに存在するMn-SODが、それらの耐性癌には豊富に存在するか、あるいはTNFα、抗癌剤が作用した時、Mn-SOD含量が著しい増加を示した。即ちSODが癌におけるTNF,抗癌剤耐性の一つの原因である可能性が強い。さらに癌細胞では、TPA添加にてMn-SODは増加し、H7にて抑制される。この結果よりSODの生化学的誘導機序の一部にはc-kinaseが密接に関与している事を認めた。そこで、SODの生化学的誘導経路をH7にて遮断する事によりTNFおよび抗腫瘍剤の腫瘍殺傷効果を回復、増強させる事が可能か否かについて検討を行った。 材料として悪性黒色腫細胞株(好転移性株BL6,低転移性株F1)を用いた。これらの細胞株は、TNFα耐性であり、1000ng/mlの添加にもその増殖は影響を受けなかった。これらの株をH7にて前処理し、c-kinaseの低下を確認後、TNFαを添加すると、TNFαの用量依存性に、細胞致死率は増加し,H7無処置群では完全耐性であったにもかかわらず処置群では50.3%の細胞が死滅した。ヒト癌細胞株では、癌種により効果は異なる為、現在追加検討中である。
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