研究課題/領域番号 |
06771472
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
耳鼻咽喉科学
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
井上 俊彦 久留米大学, 医学部, 助手 (30213169)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1994年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 一側声帯麻痺 / 声帯 / 仮声帯 / 過内転 / 音声機能 / 代償 |
研究概要 |
声門閉鎖不全の代償作用の一つとして、健側声帯の過内転が指摘されているが、具体的な運動様式や、代償の程度はよくわかっていない。声帯が過内転する喉頭を観察すると、過内転時に同側の仮声帯も内転し、声門上部に狭窄部を形成することが多い。そこで、声帯過内転の程度を、仮声帯の内転の程度で定量化し、発声機能などとの関連を調べた。 対象は、過去10年間に当科で経皮的シリコン声帯内注入術を施行した患者で、術前後の喉頭内視鏡下ストロボスコープを行った182例(男110、女72、平均59歳)で、持続発声中の両側仮声帯の接近度を観察した。その結果、患側と健側の仮声帯が発声時に接触する症例は5例のみで、他の177例では患側仮声帯の運動は認められなかった。発声時に健側仮声帯が、同側声帯を観察できないほど内転する例が57例、声帯を部分的に観察できる程度に内転する例が49例、仮声帯の内転が全く認められない例が71例であった。術前仮声帯内転例111例中、81例で経皮的シリコン声帯内注入術後に内転の程度が減少した。注入後の平均呼気流量(MFR)は、内転の程度の減少例では非減少例よりも小さく、最長発声持続時間(MPT)は、内転の程度の減少例では非減少例よりも大きい傾向を認めた。声帯の内転は発声機能を代償しようとする努力である可能性が高いと考えられた。しかしながら、術前に仮声帯が内転する111例と内転しない71例とでは、発症からシリコン注入までの病脳期間、術前の声帯位、MFR、MPT、基本周波数変動率、最大振幅変動率に有意差を認めず、声帯の内転は、発声機能を実際には代償し得ていないと考えられた。術前に声帯の内転する例では誤嚥は52%で認められたが、非内転例では37%であり、この内転は誤嚥防御と関係する可能性が示唆された。 今後、声門上部の狭窄のメカニズムについても研究していきたい。
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