実験をはじめるにあたり、ツパイの網脈絡膜循環と眼底像の特徴を検討した。そして、fluorophotomctryをツパイに用いるための測定条件の設定と手技を確立した。さらに、血液眼内柵透過性機能を評価するための係数を求めるcomputer simulation法をツパイ専用に改良した。また。この解析に必要な各固体の屈折要素の長さの測定方法も検討した。 正常のツパイを用いてその血統値を測定した結果、平均血糖値は82.1±20.8mg/dlであった。つぎに、ツパイに実験的糖尿病を作製するために必要なストレプトゾトシン(STZ)の投与量を検討した。ラットに糖尿病を作る際に用いられている量を参考とし、STZを体重kgあたり50mg、60mg、100mg、200mg、300mg、そして400mgを投与して、投与前および投与後の血糖値の変化を検討した。200mg/kg以下の量を投与したものでは、一時的に高血糖を示したものも認められたが、全てのツパイで最終的に150mg/dl以下となった。300mg/kg、400mg/kg投与したものは、一部を除いて500mg/dl以上の高値となり、この高血糖は継続したため、これらのツパイに糖尿病が発症したと判断した。このようにして作製した糖尿病ツパイにおいて、STZ投与前および投与1週間後に、fluorophotometryと各屈折要素の測定を行った。その結果、角膜自然蛍光値は2.93±0.51ngEq/mlから3.43±0.33ngEq/mlへ有意な増加を示した。一方、水晶体自然蛍光値および血圧眼内柵透過性機能の評価値には有意な差は認めなかった。本実験系を通して、糖尿病発症早期の眼内変化として、角膜自然蛍光値のみが有意な変化を示すことが明らかとなり、糖尿病発症にともない、眼内の恒常性維持機構になんらかの障害が生じていることが推測された。今後これらの実験を継続することにより、糖尿病による慢性的な眼内変化をみていきたい。
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