研究概要 |
新しい磁気共鳴画像法の1つ,Magnetization Transfer Contrast Enhancement(MTC)法は,白内障発症時の水晶体内部の水と巨大分子(タンパク質)との相互関係を捉えうる可能性が示唆されている.一方,糖尿病眼合併症の1つである糖白内障では,アルドース還元酵素を起因酵素としたポリオール蓄積に伴う浸透圧差から水晶体内部の水の動態に変化を来すことがわかっている.本研究では,アルドース還元酵素阻害剤(ARI)のラットガラクトース白内障に対する予防および治療効果判定に同法を用い,その有用性と限界を調べることを目的の1つとしていた. その結果,今回用いた新しいARIであるOPQ(Oxazopyroloquinoline)は白内障予防効果ならびに治療効果を有しており,これは生化学的にも組織学的にもその有用性を確認することができた.すなわちOPQ点眼により水晶体内ガラクチトール量の増加は有意に抑制され,組織上も水晶体線維の液化膨化所見の抑制が認められた.一方MTC法による検討では,ラット水晶体ならびに白内障の磁気共鳴画像による同定は可能であったが,大塚電子製動物実験用4.7Tesla磁気共鳴画像装置の解像度不足ならびに付随するコンピューターの演算処理能力の限界から磁気転移率の経時的計測をinvivoにて行うには至らなかった.今後,より小さな領域からの信号を有効に受信できる表面コイルの作製により解像度の改善を図るとともに,実験動物の大型化(ウサギへの変更)を含めて検討していく予定である.
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