角膜実質組織においてVI型コラーゲンはbeaded filamentとしてコラーゲン線維間の間隙を埋め、角膜実質細胞を介してコラーゲン線維の規則正しい配列を規定することにより角膜の重要な機能である「透明性」の維持に関与していることが推察されるが、平成6年度の実験で、コンドロイチナーゼABCを用いて角膜実質のプロテオグリカンを消化してみたところ、角膜は白濁し、その超微形態を観察してみると、beaded filamentとコラーゲン線維が解離し、コラーゲン線維の間隙が広がっている像が観察された。一方、20mMのATP溶液でマウス角膜実質のincubationを行い、電子顕微鏡観察をするとbeaded filamentが互いに集合し、コラーゲン線維に並行して100nm周期細線維が形成されている所見がみられるが、これを横断面で観察してみると、beaded filamentの集合にともない、コラーゲン線維が寄り集まっている像がみられる。ところが、プロテオグリカンを消化した後、100nm周期細線維を形成させた場合、その横断面をみてもコラーゲン線維の寄り集まった像はみられない。したがって、コラーゲン線維とbeaded filamentの接着に何らかのプロテオグリカンが関わっていることが考えられる。ここで、プロテオグリカンのひとつであるデコリンに着目して、眼内腫瘍により摘出にいたったヒト眼球の強角膜に抗デコリン抗体を作用させて電子顕微鏡観察したところ、beaded filamentとコラーゲン線維の間にデコリンが介在していることが明らかとなった。すなわち、角膜実質組織の構築にはコラーゲン線維、VI型コラーゲン(beaded filament)、デコリンを含むプロテオグリカンが関わっていることがわかった。今後、これらに角膜実質細胞がどう関わってくるのかを明らかにしてゆきたい。
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