1.各種動物眼から採取した網膜色素上皮(retinal pigment epithelium;RPE)のen face preparationを行い、RPE細胞のアクチンを蛍光標識して共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて観察した。鶏胚RPEの標本中に細胞死の形態的特徴を有するRPE細胞が見出され、これをとりまく正常RPE細胞による修復過程を示すと考えられる像がみられた。ブタおよびラットRPEについても同様の観察を行い、en face preparationが可能であることを確認したが、鶏胚RPEにみられたものと同様の典型的な細胞死の形態的特徴を有するRPE細胞は見出されなかった。現在、これら標本の組織学的処理方法について検討を加えつつ、鶏胚RPEにみられる細胞の死がapoptosisであるか否かの検証と、他の動物種のRPEで同様の所見の有無につき、実験中である。 2.9日齢から16日齢までの鶏胚RPEについて上記の観察で得られた細胞死の頻度と空間的分布の経時的変化を観察した。その結果、11日齢以前の標本には細胞死の像は殆どみられず、12日齢から次第に増加し、16日齢には概ね5000個のRPE細胞に対し細胞死の像が1ヶ所みられるようになることが明らかになった。また、これら細胞死の像は均一に分布するのではなく、眼球の上方周辺部に最も高頻度に分布する傾向が明らかになり、鶏胚RPE細胞の死は生物学的に意味のある現象であることが示唆された。 3.鶏胚RPEの電子顕微鏡用樹脂包埋標本を作製し細胞死の形態的特徴を有するRPE細胞の観察を試みた。観察対象の存在頻度が上述のごとく低いため、細胞死の電子顕微鏡像は未だ得られていないが、電子顕微鏡用樹脂包埋標本の準薄切切片では細胞死と考えられる像が同定でき、今後、これら標本の電子顕微鏡による観察に向けて実験を継続中である。
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