今年度はまず、今までのS抗原によるぶどう膜炎のラット実験モデル(EAU)での結果をもとに、ヒトの疾患での病態を解明する目的で、T細胞と深い関連を持ち臨床的に重要な可溶型のICAM-1、CD4、CD8、IL-2Rの測定を行った。対象はベーチェット病およびVogt-小柳-原田病症例であり、急性期、回復期など病期との関係や、治療との関連などについて解析した。その結果、可溶型ICAM-1はベーチェット病では回復期に、Vogt-小柳-原田病では急性期に上昇し、可溶型CD4はいずれの疾患でも急性期に上昇していた。特に可溶型CD4の値は可溶型IL-2Rと有意に相関していたが、可溶型ICAM-1には可溶型IL-2Rとの相関は見られず、それぞれの疾患の病因や病態を考える上で興味深い知見が得られた。またheat shock protein(hsp;熱ショック蛋白)の難治性ぶどう膜炎での病因的意義について検討するために、結核菌由来の65kDa heat shock proteinによるラットのぶどう膜炎モデルにおいてhspやその合成ペプチドに対するIgG抗体を酵素抗体法によって測定を行った。その結果、ベーチェット病患者リンパ球に増殖反応性のあるペプチドに対する抗体価はぶどう膜炎を発症したラットにおいて発症しなかったラットに対して有意に高い経時的上昇を認め、hspで免疫したラットでもベーチェット病患者リンパ球に増殖反応性のあるペプチドに対する抗体価の上昇が見られた。これらの結果からhspによるラットのぶどう膜炎モデルにおけるB細胞エピトープが決定され、ヒトのベーチェット病との相関を考える上で重要な結果であった。
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