研究概要 |
本研究では角膜組織において,TGF-β1〜3のタンパクの局在とmRNAの発現を検討した。タンパクレベルでの検討はTGF-β1〜3のLAP(latency-associated peptide)部分に対するポリクローナル抗体(Dr.MiyazonoとDr.C-H Heldinより供与)を用いた免疫組織化学によった。結果は,TGF-β1 LAPは角膜上皮と実質には認めなかったが,TGF-β2 LAPは角膜上皮の全層に強い発現を認め,実質にもびまん性に局在していた。TGF-β3 LAPは上皮層には局在を示さなかったが,実質,特に上皮下に強い局在を認めた。つぎにTGF-β1〜3mRNAの発現をRT-PCR法で検討した。in vivoの角膜上皮細胞,角膜実質細胞,角膜内皮細胞から抽出したpoly A RNAからcDNAを合成して,それをtemplateとした。使用したプライマーはTGF-β1〜3前駆体に特異的な領域(LAP領域の中)を選択して作成した。さらにそれぞれのアイソホームに特異的なプローブを作成して,サザンブロットハイブリダイゼーションを施行した。結果としては,TGF-β1前駆体mRNAは角膜上皮細胞,実質細胞,内皮細胞のいずれにも弱いながら発現していた。TGF-β2前駆体mRNAは角膜上皮細胞に強く発現しており,実質や内皮細胞にも発現を認めた。TGF-β3mRNA前駆体mRNAは角膜上皮と内皮細胞に発現していたが,実質細胞には発現を認めなかった。 Pasqualeらは,角膜組織にはTGF-βアイソホームの成熟型タンパクは局在していないことを報告している。したがって,本研究の結果は角膜上皮と実質に潜在型のTGF-β2が,実質に潜在型のTGF-β3が局在していることを示唆している。しかし,その機能や活性化のメカニズムは今後の研究課題である。
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